君の『好き』【完】
目の前に、少し伏せ目がちな吉井くんの顔。
吉井くんって、睫毛が長い......
ドキドキしながら、黒髪に指を通して、
髪を直した。
吉井くんの髪を触りながら、幸せだなって思った。
吉井くんを独り占めできたら.......
このふわふわの黒髪を触れるのも、
大きな手を繋げるのも、
私だけだったら.......どんなに幸せだろう......
「直った?」
伏せていた瞼が大きく開いて、
上目で私を見た。
「うん」
吉井くんは体を起こして、
「ありがとな」って言いながら、パーカーを脱いだ。
吉井くんの手からパーカーをそっと受け取ると、
「これにするね」と、レジへと向かった。
無事にお兄ちゃんへのプレゼントが買い終わり、
お店を出て、ビルの中を歩いた。
ふと、雑貨屋さんのキーホルダーが目に入ってきて、
バスケットボールがついたキーホルダーがぶら下がっているのが見えた。
今日のお礼に、吉井くんにあげようかな......
通り過ぎながら考えた。
でも、また愛莉さんが......
吉井くんだって、そんなのつけないかな。
でも、
でも.......
「ちょっと待ってて」
「ん?」
吉井くんに声をかけると、
また雑貨屋さんまで戻って、
キーホルダーを選んだ。
2色のボール。
どっちがいいかな......
直径2センチぐらいのバスケットボールがついたキーホルダー。
よくわかんないけど、オレンジ色のほうにしよう。
私はキーホルダーを買って、
また、吉井くんの元へと戻った。
すると吉井くんは、電話中で、
「愛莉?落ち着けって。愛莉」
愛莉さん.......
私はキーホルダーの入った紙袋を、
背中に回して、
そっとリュックのポケットにしまった。