君の『好き』【完】
吉井くんは、そのまま下を向いてしまった。
私たちの横を、チラチラと生徒たちが横目で見ながら通り過ぎていく。
「吉井......くん?」
吉井くんはなかなか顔を上げてくれなかった。
「土曜日は、ごめんな......鈴」
下を向いたまま、吉井くんが謝ってきた。
「こっちこそ、なんか.......ごめんね」
「行こ」
吉井くんは、こっちを見ることなく、
向きを変えて歩き出したから、
私も吉井くんの隣に行って、一緒に学校へと歩いた。
吉井くんは何も話さなかった。
私も、何を話せばいいのかわからなくて、
そのまま何も話さず歩いた。
教室に入っても、
授業が始まっても、
休み時間も、
吉井くんは、ずっと頬杖をついて座っていて、
私に話しかけるどころか、こっちを向くこともなかった。
そして、3時間目が終わると、
吉井くんが立ち上がった。
休み時間、
何分経っても吉井くんは戻ってこなくて、
4時間目が始まっても、
吉井くんは戻ってこなかった。
どうしたんだろう......
空っぽの隣の席を見て、だんだんと心配になってきた。
「せ、先生、ちょっと保健室行ってきます」
ガタンと、勢いよく立ち上がった。
「えっ?宇崎さん?大丈夫?」
私は先生の言葉も聞かずに、
そのまま教室を飛び出した。