君の『好き』【完】
吉井くんが......見えてる.....?
「俺が、ちゃんと見えているよな......?」
吉井くん?
どうしたんだろう.......
こんな悲しそうな、切なそうな吉井くん、
見たことない......
「俺は......類じゃない。
類じゃない.......」
.......るい?
吉井くんは顎から手を離して、
私の肩を掴み、下を向いた。
「お前には、俺がちゃんと見えているよな.....」
顔を上げた吉井くんはやっぱり悲しそうで.....
私がゆっくりと頷くと、また下を向いた。
るいって.....誰だろう。
吉井くんは、私に何を伝えたいんだろう......
「鈴.....頼みがあるんだけど.....」
「頼み?」
吉井くんは、私の両肩を掴んで顔を上げた。
「1回でいいから、
俺の下の名前......呼んでくれないか」
下の名前を、1回だけ......
1回だけ......
「瞬.......」
切なげな吉井くんを見つめながら、下の名前を呼ぶと、
肩を引き寄せられて、ぎゅっと抱きしめられた。
「ありがとな......鈴。
これでもう俺は......
俺でいることを、やめるよ」