君の『好き』【完】
体育館に響き渡る、私の声。
また静かな体育館に戻った。
吉井くんは、片手で顔を覆って下を向いてしまった。
ずっとしばらく下を向いていて、
吉井くんの元に行こうと、
キュッキュッと上履きの音をさせながら歩き出すと、
「こっち来んな」
と、下を向いて顔を覆ったまま言われたから、
その場で立ち止まった。
吉井くんはずっと下を向いていて、
顔を片手で覆っていて、
そして、前髪をくしゃくしゃっとして、
引っ張りながら、顔を上げた。
離れているし、逆光で吉井くんの表情がよく見えない。
「ありがとう」
吉井くんはまた下を向いて、
前髪をくしゃくしゃっとしてから顔を上げた。
「鈴、俺………
俺は………
愛莉を放っておけない。
だから......鈴の気持ちに応えることができない。
ごめんな」