君の『好き』【完】
愛莉さんを、放っておけない......
「吉井くんは、愛莉さんが好き?」
吉井くんは、下を向いて黙ってしまった。
「好きって言ってよ.......
放っておけないってそんなの、
吉井くんの好きって気持ちは、放っておけないってことなの?
違うでしょ?
そんな振られ方じゃ私......
いつまでも、吉井くんを諦めることができない......」
泣かないようにしていたのに、どうしても涙が出てきてしまって、
目からこぼれ落ちる前に、指でこすって涙を消した。
「鈴」
ゆっくりと吉井くんが顔を上げて、私の名前を優しく呼んだ。
「俺は.....愛莉が好きだ」
自分で言ってよと頼んだくせに、
いざ本当に言われると、こんなにも辛くて.......
「だから鈴、俺のことは忘れな。
鈴を一番に大切にしてくれる奴のそばにいた方が、
鈴は絶対に幸せになれる」
何言ってるの.......
「吉井く.....」
「鈴には、ずっと笑っていて欲しい。
俺のそばにいたら、いっぱい泣かせてしまうから。
じゃあ.......俺先に、教室戻るな」
吉井くんは向きを変えて、体育館から出て行ってしまった。
広く、静かな体育館にひとり。
「行かないでよ
おいていかないでよ.......吉井くん......」
膝から崩れ落ちると、
我慢していた分の涙が溢れ出て、
両手で顔を覆って、声を押し殺して泣いた。
忘れなって、
そんな簡単に忘れられる気持ちじゃないよ.....
吉井くんは、わかってない。
全然わかってないよ.....
私の好きって気持ちを、
わかってないよ......