君の『好き』【完】
吉井くんが、泣いた......?
「吉井は、本当にその幼なじみが好きなのかな......」
海くんは、立ち上がって自分のリュックを下ろすと、
すぐそばの壁に寄りかかって座った。
私も少し下がって、壁に寄りかかると、
膝を抱えた。
「吉井くんが泣くわけないよ。
泣く理由がない......
だって、幼なじみの子が好きなんだもん.......
最初、幼なじみの子を放っておけないっていうから、
そんな言葉じゃ私......
そしたらね、好きだって言ったの。
ちゃんと幼なじみの子が好きだって、はっきり言った。
だから、吉井くんが泣くわけない。
泣くわけないよ.....」
海くんは、足を伸ばした。
「放っておけないか......
そっか。
それは......辛いよな」
海くんはリュックから、
アルミホイルに包まれた大きなおにぎりを一個取り出した。
「このおにぎりさ、超でかくない?」
「う.....うん」
海くんはアルミホイルを半分めくった。
「しかも具がさ、いっつも3種類ぐらいぶっこんであって、
だったら、3個握ってくれよって思うんだけど、
めんどくさいって、母ちゃんが。
ひどくないか?」
ははっと笑って海くんがこっちを向いた。
「宇崎も昼飯食べな。俺も途中だったから。
続き食っていい?」
海くん、お昼ご飯の途中で来てくれたんだ。
大きなおにぎりを、小さな顔でもぐもぐと食べ始めた海くん。
「梅干の隣に唐揚げ入ってるし。唐揚げっておにぎりの具か?」
そう言いながら、おにぎりを見せてくれて、
本当に、うめぼしと唐揚げが隣同士になっていて、
思わず、くすっと笑ってしまったら、
海くんも、可愛く笑ってくれた。
泣きすぎて、痛む目を少しこすって、
私もリュックから弁当箱を取り出すと、足を伸ばして膝にのせた。
「海くん、ごめんね......
来てくれて、ありがとう」