君の『好き』【完】
膝の上のお弁当を持ってそう言うと、
海くんは小さく首を振った。
「そんなのはいいから、早く食べな」
海くんはまたおにぎりを食べた。
なんか、海くんといるとホッとする......そんな気がした。
あまり食欲がなくて、少しだけ食べて蓋をすると、
弁当箱をリュックにしまった。
「教室に戻れそう?」
海くんに言われて、体育館の時計を見つめた。
まだ5時間目、あと6時間目もある。
それに、教室に戻ったら、隣の席に吉井くんがいる。
私は俯いてしまった。
「帰ろうか」
えっ......
海くんはリュックを背負った。
「だって、海くん6時間目は?それに部活は?」
海くんは立ち上がった。
「6時間目はさぼる。部活は......今日は休み。
よし、帰ろう!」
ははっと笑って私のリュックを持ち上げた。
「その代わり、明日からちゃんと教室行こうな。
辛いかもしれないけど、
避けるのは、よくない。
大丈夫だよ、時間が解決してくれる。
とにかく、今日は帰ってゆっくり休みな」
時間が、解決してくれる......
「うん.......」
ゆっくり立ち上がると、海くんからリュックを受け取って、
背中に背負い、海くんと歩き出した。
一緒に学校を出て、一緒に帰った。
海くんは少し黙っては、突然関係ない話をして、
なんだかそれがおかしくて、
笑ってしまった。
海くんは隣からずっとにこにこ笑っていて、
その笑顔を見ていたら、なんだか癒されて......
私の家の前に着くと、
ニコニコ笑っていた海くんが突然真剣な顔になって、
私の顔を覗き込んできた。