君の『好き』【完】
「宇崎、俺......
宇崎が元気になるまで、そばにいてもいい?」
海くん......
「吉井を忘れさせることはできなくても、
宇崎を笑わせることはできるから」
海くんは真剣な表情から、ははっと笑い出した。
「って言っても、クラス違うし、放課後は部活だし......
結局、朝だけなんだけど。
それでも、宇崎の気が紛れんならいいなって......」
いつまでも海くんは、女の子みたいにかわいい男子だと思っていたけど、
今日の海くんは、少し男らしく感じた。
「海くん、ありがとう。
でもそんなの、海くんに悪いから......」
「俺が、宇崎のそばにいたいから。
じゃあ、明日朝な」
海くんは歩き出し、まっすぐの道の先にある、
海くんの家に振り向くことなく入って行ってしまった。
私のそばにいたい......
海くんからそんな言葉が出てくるとは思わなくて、
少しびっくりしながら、玄関の鍵を開け、中に入った。
夕方までお母さんはパートだから家には誰もいない。
自分の部屋に入ると、
リュックを下ろし、ベッドに腰掛け、
パタンと横に倒れた。
吉井くんのことを思い出しては、
涙が横に流れた。
本当にこの気持ちが、
時間が経てば消えるのだろうか。
吉井くんを好きにならない時がくるの?
そんなの、無理だよ......
だって、学校に行けば隣にいる。
吉井くんに会えば、
吉井くんを見れば、
どうしても、好きって気持ちが溢れてしまう。
【好きな人の幸せを願う】
ふと、海くんの言葉を思い出した。
海くん、私......
海くんみたいに、思えないよ......