君の『好き』【完】
口元に当てた握り拳が、かたかたと震えて、
どうしようもなかった。
泣いちゃダメだよ、普通に、普通に.....
「吉井くん。おはよ」
泣きそうになりながら、口元の手を離して挨拶すると、
「おはよ、鈴」
優しい低音の声で、吉井くんが返してくれた。
吉井くんの顔は、とても悲しそうな苦しそうな顔で、
私から目をそらすと、また前を向いてしまった。
その時、私の携帯が鳴った。
メール?
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頑張れ!!宇崎!!
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海くん......
私は携帯を握り締めた。
もう、無理なんだよね。
こんなに近くにいるけど、
もう、私の想いは届かないんだよね。
吉井くんは、愛莉さんと.......
諦めなくちゃ、
吉井くんをいくら好きでも、辛いだけ。
諦めよう、忘れよう。がんばれ、私。
授業中、その言葉を何回も頭の中で繰り返して、
なるべく隣を見ないようにしていた。