ツンデレくんをくれ!
おかしい。本当におかしい。


「……ご飯を食べれなくなるなんて」


あたしは乙女か。


「ごめん、志満ちゃん。今日なんかおかしい。あたしが食べるの遅いなんて」

「全然気にせんけど。でも、珍しいね。奈子が私より遅いなんて」


志満ちゃんの食事の時間は、あたしの倍はかかる。


あたしが早食いということと、志満ちゃんがゆっくりとよく噛んで食べることが重なって生じることだけど、今日ばかりはおかしい。


せっかく志満ちゃんが誘ってくれて、大好きな豚骨ラーメンを奢ってくれたのに。


それもこれも全部中出のせいだ。


あれから一週間経っても中出の笑顔が頭から離れないのだ。


あの、優しげな、あたしに言わせれば可愛いの一言に尽きるあの笑顔だ。


寝ている間も授業中も頭から離れないのはまだいいとしよう。あたしとしてはまだ許容範囲だ。


でも、部活中もってどういうことよ。


本人がいるんだよ。通常営業の真顔の中出があたしの目の前にいるんだよ。


それを見てもなお本人の笑顔を思い出すってどういうことよ。どんだけ離れないのよ。


おかげで今までの中出のイメージが「根暗で近寄りがたい奴」から「一見近寄りがたいけど実はツンデレ疑惑浮上野郎」に大幅修正されたじゃないか。


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