ツンデレくんをくれ!
口を押さえて緩んでしまう口元を必死に隠そうと頑張った。


これが本人の前じゃなかったら近所に響き渡るくらい爆笑していたに違いない。


だって、中出が、めっちゃ地味な中出が!


あたしも好きだけどな!


「それ、すげー失礼……」


自分の発言を笑い飛ばそうとしたあたしは、中出の一言で笑えなくなった。


こいつの言葉には沈静力がある。


「……すみません」


急に重くなった空気に耐え切れずあたしは謝罪の言葉を口にした。


……終わった。


あたしの今回の恋は一週間で幕を閉じたよ。


いくらあたしでも一週間はなかったよ。せめて一ヶ月は好きでいたよ。


なんてこったい。部活じゃ女子はあたしと志満ちゃんだけだしとかなんか妙な自信を持ったあたしがばかだった。


ライバルはあたしの知らないところにいた。


しかも、自分で嫌われるようなこと言っちゃったし。


言わずにはいられなかったけど、自分が言われたら、うん、たぶんそいつ殴ってる。


ごめん、中出。悪気はなかった。ばかにしたつもりはないんだよ。むしろ告白されても冷静でいられる君を尊敬しているよ。


さようなら、中出。さようなら、あたしの恋。さあ、あたしは次は誰を好きにな…………


「だから、彼女の代わり、してくれん?」

「……は?」


今、こいつなんて言った?


彼女、の代わり?


今、どことどこを繋いだ?


どれとどれを合わせてそんな結論に至った?


あたしの頭は既にショート寸前である。


中出に完全に嫌われただろうと思ったから余計だった。


頭を抱えてもわからないものはわからない。


「ごめんなさい、中出駿哉さん」

「……はい」

「あほなあたしにもわかるように説明してください」


ごめんなさい、中出さん。


あたしはあほですごめんなさい。


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