ツンデレくんをくれ!
「……まあ、正直」

「うん」

「俺、わからん」

「何が?」

「なんでその人が俺を好きなのか」

「それは本人に聞いてみないことには……。てかさ、中出」

「はい」

「付き合っちゃえばいいのに。その子と」


ああ、なんであたしって自分で墓穴掘るようなことを言っちゃったんだろう。


やばい、もう泣きそう。自分で言ったくせにそうだねとか返されたらここから逃げるぞもう。


実家帰るぞ。ここから700キロ離れて暮らしている家族のもとに帰るぞ。


「……いや、だって、はっきり告白されてな……あ、された」

「されたんかい」

「今日、空きコマのとき食堂いたら、向かい側に座ってきて」

「うん」

「めっちゃ真面目な顔で付き合ってって言われた……」

「うん、なんでさっき起きた出来事を忘れてたかな、君は」


告白って、人によっちゃ一世一代の勇気を振り絞っているというのに。


冷静に突っ込んでいるようでも、実は内心大変ご乱心である。


正式に付き合ってって言われたのね。あたし、完全に劣勢の一途辿ってるよね。これ、望みないんじゃね?


今度こそ泣きそうです、あたし。


実家どころか外国に飛び立ちたい勢いです。


そんな悲しみを悟られまいとあたしは口を動かす。


「で、中出はなんて答えたの?」

「少し考えさせてって……」

「その子と付き合う気はあるの?」

「ない」


即答ですか。


内心安心したあたしがいた。


……って、そうじゃない。


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