ツンデレくんをくれ!
「んーと、中出。念のため、念のために聞くけど、女の子と付き合ったことってある?」

「……ない」


でしょうねと言いそうになった口元を必死に押さえる。


また嫌われるきっかけを作りたくない。


まあ、そうだろうとは思っていた。


「あんたは重大なミスを犯した」

「は?」

「返事を保留にするってのは、それに応える可能性が少しでもあるからなんだよ。めんどくさいから遅らせるためじゃない」

「…………」

「返事を先延ばしにされるのって、無駄に期待しちゃうんだよ。その分すげー落ち込むし」

「はあ……」

「それ、考えて言った? あんたのことだから、今返事するのはかわいそうとか思ったんじゃないの?」

「あの、飯田さん」

「何」

「経験、あるん?」


うぐ……と、あたしは言葉を詰まらせた。


そんな、そんなキラキラした目で、んなこと聞くなよ!


お前、目細いくせに無駄に光が目に入ってすげーキラキラしてる!


なんか自分が急にくすんだ人間になったみたいで悲しいんだけど!


これでもあたしまだ十代なんだけど!


「……とりあえず、あんたあほだね」


さっきの仕返しも含めて無視してやった。


経験? ええ、ありますよ。ありますとも。


告白したら一ヶ月返事待たされて、結局その間にその男は彼女作ってあたしを振りましたよ。


その時の悲しみの度合いと引きずりっぷりと言ったら尋常じゃない。


振られても泣かないあたしが暇さえあれば人目のつかないところで号泣して、それから一年間そのろくでもない男を引きずりましたとも。


恋する女の子の気持ちはよくわかっているつもりだ。


だから、敵とはいえまだ見ぬ女の子にも少なからず同情の念を覚えた。


< 20 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop