ツンデレくんをくれ!
「さっさと断りなよ」

「あ、さっきメールで断った」

「……先言えよそういうことはよ」


無駄に過去の古傷を抉られたんだけど。


ていうか、なんだかんだでその子とメル友なのね。メールする友達なのね。


あたしなんてお前のLINEのIDすら知らないってのに!


くっそう、ここでも劣勢かよ!


内心滝の涙を流す勢いだ。


「返事来たの?」

「ん」


中出がポケットの中からスマホを取り出してメール画面を立ち上げてあたしに見せた。


わあ。中出のスマホってギャラ○シーなのか。めっちゃ画質とかいいじゃん。あたしなんて古いiPhoneなのにさ。


ふむ、「佐々木梨花」。「ささきりか」って名前なのか。ずいぶん可愛い名前ね。


あたしなんて、「奈子」なんて、なんか最初の一文字つけ忘れた? って感じの名前なのにさ。「ななこ」でも「ひなこ」でも「かなこ」でもよかっただろーがよ。なんだよ、「なこ」って。あーいい名前っすね。あー羨ましい。


……いかんいかん。ひがんでる場合じゃない。


あたしはメールの内容に目を移す。


『うん、わかった。
でも私、中出のこと諦めるつもりないから。
絶対好きにさせるからよろしくね☆』


「……えーっと」


メールの内容にあたしは絶句するほかなかった。


ありがとうと中出にお礼を言うと、中出はスマホをポケットに閉まってため息をついた。


「んーと、ずいぶん自信があるんだね。その子……」


もはや尊敬しますよ。顔も知らない佐々木さん。


なんだよ、諦めるつもりないからって。全然わかってないじゃないですか。


しかも、『よろしくね☆』って何。何その、振られても余裕釈々な感じ。


羨ましいです。分けて欲しいです、その余裕。


あたしなんて、いまだにテニス部の男子と仲良くなれなくて、つい先日志満ちゃんの前で号泣したくらい余裕ないってのに。


あたしとこの子を足して二で割ったらちょうどいいと思うよ。平凡になれるよきっと。


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