ツンデレくんをくれ!
「それで、これからのことなんだけど……」

「すいません。チョコバナナパフェ一つでー」

「じゃあ、あたしはカレードリアとクラムチャウダーでー……って、無視すんなよっ!」


中出ではなく、注文を受けた店員のお姉さんに笑われた。


「チョコバナナパフェとカレードリアとクラムチャウダーですね」なんて、くすくす笑いながら店員のお姉さんは去って行き、あたしはそれを一瞥してから水を一気に飲み干した。


「無駄な恥かいたし……」


ぼそりと呟いてあたしは火照った頬に手を当てた。


くっそう、思わずやっちまったぜ。恥ずかしい。


中出が何も言わないからちらっと向かい側に視線を移すと、声を出さずに中出がくすくす笑っていた。


「……何よ」

「いや、飯田さん、意外におもしろいなって」


笑いながら話すもんだから、なんだか妙に照れる。


それくらい、中出が笑う姿は珍しいのだ。


あたしの過大解釈かもしれないけど、あたしが中出を笑わせたんだって。


中出の笑顔をあたしが生み出したんだって。


「意外にってどういうことよ。あたし、そんなにつまらなそう?」

「そうやないけど、もっと話さないかなって思っとったから」

「そういうことって、遠くから見てるだけじゃわかんないよね。あたしも最初、中出は笑わない奴だと思ってたし」

「ひでえ」

「ほんと、ひどいよ。そりゃまあ、見た目も大事だけどさ、中出ほど話さなきゃわかんない人は初めてだよ」

「俺って、見た感じどうなん?」

「まあ、あまりいい印象ではないよね。悪い奴だとも思わなかったけど」

「ふうん」

「近寄りがたい。部活が一緒じゃなかったら、近づいたいとも思わなかったと思う」

「へえ」


それから中出が口をつぐんだから、あたしは内心焦った。


……あれ。ちょっと言い過ぎたかな。


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