ツンデレくんをくれ!
盾にされた女の気持ちにもなれ
中出がボールを打つ。走る。打つ。ボレーする。


「飯田さん。飯田さん」


サーブを打って、ボールを打って、走って、また打って。


「飯田さん。飯田さんっ!」

「はいいいいいっ!」


至近距離で呼ばれて、あたしは慌てて振り向いた。


「次、飯田さんの番ですよ」

「ご、ごめん……」


男子の後輩くんが困ったように首を傾げてあたしを見ていた。


はい、あたしは今はボレーの練習していたんでした。ごめんなさい。


隣のコートの中出と小杉くんの試合を見ている場合ではありませんでした。


ああ、本当にやばい。


あたしは思ったよりかなり重症らしい。


部活中にまで中出を見てしまうなんて。


テニスに集中しなきゃいけないのに。


ボレーの練習をしながら、さっき見た中出の姿が頭から離れないとか、本当におかしい。


おかげで集中力がなくてボールがラケットに当たらないとかおかしい以外の表現が見つからない。


やばい、基本的なことすらできてない。


ダメだって。恋のせいでテニスできなくなるとかほんとダメだって。


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