ツンデレくんをくれ!
「やばい。本当にやばい」

「まあ、もともとそういうところはあったけどね、奈子」


志満ちゃんがくすくす笑っている。


「や、でも、こんなに集中できなくなるとかやばいよ。部活できないよ」


どうしたものか。


休憩中、財布を持ってコートの傍にある自販機まで飲み物を買いに行こうと志満ちゃんと歩いていた。


「あ、奈子さん」


こちらに気づいた中出が声をあげた。


「何?」

「俺の分も頼んだ」

「誰が買うか、どあほ」

「うわ、ひでえ」

「どーせ奢らせる気でしょ」


「ばれたか」と歯を見せて笑う中出にいちいちときめく自分は本当におかしい。


そんなやり取りを隣で見ていた志満ちゃんがニヤニヤと笑っていた。


「奈子、すごいじゃん」

「は?」

「中出と普通に話せてるやん。すごいよ」

「ああ…………」


付き合っていることは、志満ちゃんにすら話していない。


まあ、少しずつ話せるようになっていることは志満ちゃんにも話しているけど。


彼女の代わりをしているんだなんて言ったら、志満ちゃんはどう思うかな。


あたしはスポーツドリンクを二本買った。


「あれ? 結局中出の分も買ってあげたんや」

「違います。あたしが二本飲むんです」

「11月なのに?」

「あたしは汗っかきなの」


まあ、くれと言われたらあげてあげるけどという言い訳は死んでも言わない。


だって、恥ずかしいじゃんか。


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