ツンデレくんをくれ!
「よし、行ってみるかー」


それから三日後、あたしは空きコマを利用して工学部に行くことにした。


中出には散々ぼろくそ言っているけど、本当はいつも会いたいのだ。


傍にいれる今がすごく幸せだと思う。


今は偽の関係で、いつか終わりが来てしまう。


そんな話など何もせずになんだかんだで三ヶ月が経って、このままずっとこんな緩い関係が続くのかなってぼんやりと思う時もあるけど、それはないのだと自分で戒める。


幸せボケをしてはいけない。


でも、この関係を終わろうって言われたら、たぶんあたし泣くな。


一ヶ月は立ち直れない。


工学部はこの大学で一番大きい学部だ。


人数も多ければ、校舎もでかい。


他の学部は校舎が一つしかないのに、工学部は二つある。しかも、二つともでかい。


講義を行われる教室がある第一校舎と、パソコンなどの機材がある第二校舎があるけど、学生は大抵第一校舎にいるらしい。


工学部は、やはり男子が圧倒的に多かった。女子に至っては、見かけたら目に留まるほど珍しい。


女子から見れば、星みたいに多い男子の中で好かれた中出って、けっこうすごい奴だと思う。


さて、中出を探してみよう。授業かもしれないけど。


一時間校舎を徘徊して見つからなかったら帰ろうっと。


四階まで階段で上がって、下がりながら探すつもりだった。


「中出ー!」


廊下を歩いていたら、あたしの後ろから高めの声が聞こえてきた。


……中出?


あいにく、あたしは好きな人の名前に敏感な輩である。


とっさに後ろを振り向いたら、あたしの横を人影がすごい勢いで通り過ぎて、風が吹き抜けた。


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