ツンデレくんをくれ!
「……は?」


何が起きたかもわからず、ただ茫然として元の位置に戻ると、傍から見たら白昼堂々とお幸せですねと言いたくなるような光景があたしの視界に入った。


相変わらずだるそうな中出と、その中出に抱きついている女の子。


あたしから見たら、女の子をぶっ飛ばしてやりたくなる光景だけどな。


「佐々木、離れろ。鬱陶しい」


人前で女の子に抱き着かれているのに、涼しい表情を崩さずに冷たく言い放つ中出をさすがだと思った。


感心している場合じゃないけど。


そうか、あの子が佐々木さんなんだ。


よく見ると、なかなか可愛らしい。


ていうか、あいつあの子のことギャルって言ってなかった?


女のあたしから見たら、佐々木さんは本当に普通の女の子だ。


間近で見れないからあまりわからないけど、ぱっと見は清楚系で、服は淡いレモン色のカーディガンにネイビーのサーキュラースカート。胸の上まである明るい茶髪は毛先だけが巻かれていた。


顔も、たぶんかなりいい。


中出、悪いけど、あんな子をギャルなんて言ったら、全世界の女の子を敵に回すぞ。


それとも、ギャルの意味を履き違えているとか?


中出ならありうる。


ていうか、あんな子に好かれて、なんで中出は嫌なんだろう。


傍から見れば、言っちゃ悪いけどけっこう不釣り合い。中出が告白して佐々木さんに振られる光景が容易に頭に思い浮かぶほどだ。


なのに、現実は真逆の展開。まじでおかしい。


この世界、なんだかおかしくなっている気がする。


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