ツンデレくんをくれ!
それに比べて……。


あたしは、傍のガラス戸に映る自分をまじまじと見つめてしまった。


白いトレーナーにベージュのキュロットスカート。一応ロングネックレスも首から下げているけど。


佐々木さんと比べたら、かなり地味だ。


そう思うのは服のせいだけではない。地味顔なのは自覚している。


アイラインを引いてマスカラを付けても細い目に赤い眼鏡。口紅を塗っても華やかになれない唇。顔が隠れてしまいそうな、胃のあたりまでありそうな真っ黒のロングヘア。


テニスをしているし身長が高いからスタイルはそこそこだと思うけど、くすんで見えてしまう、自分の姿。


こんなあたしが三ヶ月も中出と一緒にいたなんて、なんだか急に恥ずかしく思えてきた。


あたしは今まで何をしてきたんだろう。


佐々木さんといた方が、中出にとってはいいじゃない。


なんで断るの?


ああ、だめだ。暗くなってきた。


もう負けた気分。


「だから、無理やって。俺には彼女いんの」

「諦めないって言ったやん。中出が付き合ってくれるまで言い続けるから」


ああ、佐々木さん、実際に見てみたけど、本当にあなたの精神は素晴らしいよ。


あたしにその精神力をわけていただきたい。


あたしの精神力を高めていただきたい。


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