ツンデレくんをくれ!
支度をして、徒歩5分のコンビニに寄って、今日のお昼と、チョコレートブラウニーとプリンパフェとシュークリームを二つずつ買った。


中出もあたしも基本的にスイーツならなんでも好きだし。


シュークリームを頬張る中出を妄想してにやけてしまう。


絶対可愛いなあ。


「奈子さん、気持ち悪い」


いつでもどこでも朝でも夜でもあたしに毒を吐いてくるのは一人しかいない。


振り向くと、あたしより幾分背が高い、見るからに寝起きで機嫌が悪そうな我が(偽)彼氏。


「中出の分のスイーツ、あたしが食べちゃうよ」

「俺が何のために来たと思ってんよ。むしろ俺が奈子さんの分食べるし」

「絶対やだ。完全阻止のため、戦う」


あたしが中出を睨みつけながらレジに食べ物を持って行ったら、店員に笑われた。


「はい、コーヒー」


コンビニを出るなり、あたしはホットコーヒーを中出に差し出した。


「ちゃんとカフェオレにしたよ」

「どうしたん? 今日」

「何が?」

「なんか、いつも以上に奢ってくれるし」

「人ん家行くのに何も持っていかないわけにいかないでしょ。ついでに、今月はバイト代がいつもより多かったから」

「余裕ぶっこいとるんや」

「うるさい」


じろりと睨みつけると、缶に口づけながらくすりと笑っている中出と目が合った。


「ていうか、今日、眼鏡なんだ」


慌てて目を反らして、黒の軽自動車に乗り込む。


なんだかいつもよりドキドキしている。


不機嫌からのふんわりと柔らかい笑顔と、見慣れない黒縁眼鏡のせいで。


「奈子さんがいきなり呼び出すから、コンタクトする余裕もなかった」

「てか、コンタクトしてることすら知らなかった」

「しとるよ」

「ふうん」


つまり、眼鏡をかけるのって寝起きとかだけってことだよね。


いつもとは違う中出にドキドキする。


普段コンタクトをしている人がたまに眼鏡をかけている姿は、かなりぐっとくるものがある。


特に、あたしが中出の眼鏡を見た場合は。


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