ツンデレくんをくれ!
「俺、思ったけどさ」


ひとしきり笑った後、中出が口を開いた。


「奈子さん、笑った方がいいよ」

「は?」

「なんか、真顔だと怖いし」

「……あ?」

「奈子さんて、いつも怒ってるように見える」

「は? あたしがいつ怒ったよ」

「怒ってないのけ?」

「あたし、本気で怒ったら人前から消えるんだけど」


つまり。


あたしは普段の顔から怖がられているってことか?


……どんな損ですか。


「奈子さん、笑ってたらすごくいいのに」

「え……」


中出に初めて褒められた気がする。


なんだか恥ずかしくなって顔が火照る。


「たぶん、隆も落ちてたよ」

「はあ?」


何を言ってるんだ、こいつは。と一瞬思ったけど、すぐに一年生のときのことを言っているのだとわかった。


「今更でしょ」

「そうなん?」

「隆は、今はいい友達だから」

「ふうん」

「あと、今は笑えそうにない」

「なんで?」


あたしは一つ息を吐いた。


もう、これで終わりだ。


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