ツンデレくんをくれ!
彼女なんて言葉を口にするとは
それから一年後。


「あたしら、完全にいらないよね……」


向かい側に座っている志満ちゃんにぼそりと呟いて、あたしは二人の間のポテトに手を伸ばした。


「うーん……」


志満ちゃんも歯切れ悪く頷いてオレンジジュースを啜った。


あたし達の隣の席には、テニス部二年生、いわばあたし達の同級生の男子四人。


そこにはもちろん小杉くんもいた。


二年生になって早半年。男子と女子の間の壁は少しばかり壊れつつあった。


……ように見えたけど。


こうして男女が揃って一緒にいることもかなり珍しければ、ご飯を食べることも珍しい。


男子は男子で一つのテーブルを囲んでご飯を食べながら談笑している。


その隣のテーブルに座った女子のあたし達は男子の会話に混ざることもなく二人でぼそぼそとご飯を食べていた。


この頃にはもう、小杉くんへの気持ちは既に冷めきっていた。


ていうかまあ、あれからすぐに冷めたんだけど。


あれほど無視されてなおも一途に思い続けられるほどあたしはMでない。


あの一件であたしは猛反省した。今後、もし部内で好きな人ができたら、絶対に口外しない。密かに思うだけで終わろうと。
(イケメン好きの惚れっぽいあたしだから、近くに男子がいたらどうしても好きになってしまうのだ。一年間好きな人がいなかった今の自分が不思議なくらいだ)


そう心掛けて部活をやってきたら、小杉くんや他の人に話しかければ普通に返してくれるようになったし、部活の雰囲気も心なしかほんの少しよくなった気がする。


それでかれこれ一年が経った。


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