ツンデレくんをくれ!
どういうこと? と聞く前に車は発進した。


無視かよ。


相変わらず気まぐれだ。


自分で言ったんだからちゃんと最後まで言えよ。


相変わらず腹立つな。


ちゃんと言ってくれないとこっちはわからない。超能力者じゃないんだから。


お互い黙り込んだままでいたら、あっという間にあたしの家の前に着いてしまった。


「じゃあね、中出」

「……俺って、もともとあんま人を好きにならん奴で」


車から降りようとしたら、中出がぼそっと口を開いた。


「たぶん、臆病なんやと思う。人を好きになって、それを伝えて相手を傷付けたらって昔から考えてて」

「……告白されて傷つく人はいないと思うけど」

「あまり人と深く関わりたくないって思っとった。俺も傷付きたくなかったから」

「じゃあ、あたしはその中にいたってこと?」


中出はわずかに頷いた。


「じゃ、志満ちゃんは?」

「そういうことを何も気にせんくても傍にいれると思った」

「それってつまり、意識してなかったってことだよね。おいこら、あたしの親友を悪く言うなよ」

「そうやない。俺の感情の問題。加山さんのことは何も思ってない」

「あっそ」


ほんと、そんなことまであっさり言っちゃうんだから。


まあ、あたしを意識してくれたってのは悪い気しないけどさ。


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