凪とスウェル
キヨさんもそう。


よくうちの店に酒を買いに来てたんだけどさ。


ある日突然、店番してた俺に「配達頼める?」って聞いてきたんだ。


じいちゃんはワシが行くって言ったんだけど、キヨさんは俺がいいって聞かなくて。


最初はさ、なんだ?このばあさんって思ってた。


なんで俺が自転車で重たいビール運ばなきゃなんねーんだよって。


それにキヨさんてさ、俺が沈んだ顔をしてると、本気で説教するんだ。


それがもう、すげーおっかねぇの。


この辺りの言葉って、怒ると結構こえーじゃん?


うるせーババアだなって思ってたけど、キヨさんは俺に対して、自分の孫みたいに本気で気持ちをぶつけてくるんだ。


なんかだんだん、実はいい人なのかなって思うようになって…。


ここって田舎だし噂はすぐ広がるしさ、島の連中は俺の事情を知ってるっぽかった。


もしかしてみんな、俺に同情して声をかけてくれたのかもしれない。


最初はそういうのイヤだったんだけど、両親を失って、どうやって生きていこうか迷ってた俺に、島のみんなは優しくて…。


島が俺を救ってくれたからさ…。


だから俺、島を悪く言うヤツが許せなかったんだ。
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