凪とスウェル
だけど。


春休みが始まって一週間。


隆治に会えることはなかった。


携帯のない隆治に連絡するのは、なかなか勇気のいることだった。


仮にお店に電話したとして、何を話せばいいの?


会いたい…なんて、口が裂けても言えないし。


わざと隆治の家の前を、自転車で通ってみるとか。


でも、会えなかったら何の意味もないよねぇ…。


あーあ、早く新学期にならないかなあ…。


そんなことを考えている時だった。


「ねぇ。なんか音楽が聴こえない?」


「そういやー、なんか聴こえるねぇ。

2階から聴こえようるよ。すずの部屋じゃないんねぇ?」


「え?」


よくよく耳をすませると、あたしの部屋から携帯の着信音が響いていた。


「ごめんっ。食事の途中だけど、出ていい?」


あたしがそう言うと、二人がどうぞどうぞと手で合図するので、あたしは慌てて2階へと駆け上がった。


ガラッと扉を開け、暗闇の中、机の上で光る携帯を手にする。


画面を見て、目を疑った。


うそ…。


隆治からだっ!
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