凪とスウェル
トラックは民家など全くない海岸に到着し、あたし達はトラックを降りた。


二人は慣れた様子で、トラックの荷台に乗り、あっという間にカヤックやその他道具を砂浜に運んでしまう。


「はい。すずちゃんコレ着て」


木下さんに渡されたのは、黄色のライフジャケット。


早速腕を通してみる。


隆治も木下さんも同じようにライフジャケットを身につけている。


「向こうに小さい島が見えるでしょ?あそこを目指すから」


「えーっと、つまりあの。

カヤックに乗って、あの無人島まで行くってことなんですか?」


「うん。そういうこと」


えー、こんなので向こうの島まで行けるものなの?


へぇぇ~、知らなかったな。


「これがパドル」


木下さんにオールのようなものを手渡されて、持ち方と漕ぎ方のレクチャーを受けた。


思ったより難しそうで、なんだか心配だ。


「まぁ、習うより慣れろかな?

僕はこっちのに乗るから、すずちゃんは隆治と二人で乗って」


木下さんはそう言うと、一人でカヤックに乗り込み、あっと言う間に水際から出発してしまった。


「すずは後ろに乗って」


隆治に言われるまま、あたしは後ろに乗り込んだ。


「乗れた?」


「うん」


「じゃあ、出発」


にっこり笑うと、隆治はカヤックを出発させた。

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