凪とスウェル
そうこうしていると、隆治がカヤックから降りて、浜に上がって来た。


「なんかやたら二人で盛り上がってたな」


隆治が涼しい瞳で、あたしと木下さんを交互に見ている。


「あぁ、すずちゃんと楽しい話してたんだ」


「へぇ…」


冷めた声で呟く隆治。


興味すらないってか!


「あ、そうだ。僕、ちょっと島に戻ってくる。

また夕方迎えに来るからさ、二人はここでのんびりしなよ」


にっこり笑う木下さん。


「えっ?カズ兄、戻るの?なんで?」


「ちょっと愛車の調子が悪いんだ。

明日彼女と会うし、今日中に直しておきたいんだよ。

悪いねー」


それ、ホントの話?作り話?


なんか怪しい…。


「食べ物や飲み物やら、必要なものはこのリュックの中にあるから、勝手に出して食べて。

じゃあ、また夕方にー」


そう言うと木下さんは、あっと言う間にカヤックに乗り込み、すごいスピードで島に向かってしまったのだった。
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