凪とスウェル
「お願い、すずちゃん。時々でもいいから、これからもウチのパンを食べてくれない?」


「えぇっ?」


「すずちゃん、ウチの味を気に入ってくれてたよね?

それとも、もう飽きちゃった?」


「い、いやあの。飽きてないよ」


本当に大好きだもの。


でも…。


「じゃあお願い!時々でいいから!

長谷川君も、そうしたいって言ってるの」


な、なんだって~?


こっちは遠ざかろうとしているのに、どうして関わって来ようとするのよー!


「私、長谷川君の笑顔を見たいのよ。

彼、仕事一筋で、普段あんまり笑わないから…」


笑わない…?


「お客さんの笑顔が、一番の喜びなんだって。

おいしいって言われるのが、何よりも嬉しいみたい」


思わずふぅと息を吐いた。


千春ちゃんは、本当に隆治が好きなんだね…。


「うーん。じゃあ、一週間に一回くらいなら…」


「ホントに?ありがと~、すずちゃん」


目をうるうるさせる千春ちゃん。


あたしって昔から、女の子にこういう頼み方をされるのが一番弱いのよね…。
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