凪とスウェル
隆治は深く眠っているわりに、あたしのことを離そうとはしなくて。


千春ちゃんを思うと複雑だけど、隆治に抱きしめられていることはせつなくも、どこか嬉しくて。


いけないと思いつつ、あたしも隆治にしがみついてしまった。


エアコンのない扇風機だけのこの和室で。


波の音を聴きながら、あたしもゆっくり目を閉じた。


そして結局、朝までそのまま眠ってしまった。





翌朝、あまりの暑さに目が覚めた。


汗で髪が首にびっしりくっついていて、なんだか身体も重かった。


チラリ横を見ると、隆治はまだぐっすり眠っていて。


抱きしめる腕がダラッと脱力していたので、あたしはそっと隆治から離れた。


やけに部屋が明るいなと思ったら、電気を付けっぱなしにしていたようだ。


電気を消すと、あたしは静かに扉を開け、1階に下りた。
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