凪とスウェル
それを聞いたら、なんだかちょっと吐きそうになった。


「えー、そうかなあ…。
長谷川君ってそんな人かなあ…」


千春ちゃんが首を傾げる。


「もうっ。千春ちゃんまで。

あなた達、付き合ってもう何年?

随分経つじゃない。

それなのに男女の関係がないって方が不自然じゃん」


千春ちゃん、顔が真っ赤だ。


あたしも人のことは言えないけど、千春ちゃんも相当奥手なんだね。


でも…。


知らなかったな…。


隆治と千春ちゃん。


まだそういう関係じゃなかったんだ…。


「うーん…。

それだったらいいんだけど。

とてもそうだとは思えないんだよね…」


千春ちゃんが悲しそうに俯く。


「ん?どういう意味?」


そう言ってサエちゃんが、長いストレートの髪をかき上げた。


「なんかね。

この頃長谷川君、全然元気がないの。

もともと無口であんまり笑わないのに、それがもっとひどくなった気がするの…」


「あの隆治が?

うそー。

そんなの信じられなーい」


サエちゃんが意外そうに目を見開く。


「アイツ、右京の前じゃよくしゃべるし、よく笑うわよー。

私にはひどい態度だしねー。

なんか変なモンでも食べたんじゃない?」


サエちゃんがケラケラと笑う横で、千春ちゃんは複雑そうな顔をしている。
< 499 / 733 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop