凪とスウェル
「中身、見たよな…?」


隆治があたしの向かいに座りながら、フッと口角を上げる。


あたしはコクンと頷いた。


「ショックだった…。

色々、全部…」


あたしの言葉に、隆治は目を伏せてしまった。


「隆治の気持ちはわかるけど、その時に全部話して欲しかった…。

あたし、言ったよね?

隆治が東京へ引っ越した日。

あたしは隆治の味方だよって。

何かあったら、あたしに頼ってねって。

それ、忘れちゃった…?」


あたし、そんなに頼りなかった?


その時に本当のことを話してくれてたら、あたし全力で隆治を支えたのに…。


何もさせてもらえず、一方的に別れを告げられたことが。


あたしには一番つらいことだった。


「全部、話して欲しい…。

今まであたしに隠して来たこと、全部…。

それくらいのこと、許してくれるよね…?」


隆治はあたしの顔をじっと見つめると、きゅっと目を細めた。


しばらく続いた沈黙の後。


隆治は静かに話し始めた。
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