凪とスウェル
八神がヘルメットを被るので、あたしも慌てて被った。


先にバイクに乗った八神は、何も言わずにあたしが乗るのを待っている様子だ。


あたしはおずおずと後ろのシートに跨いだ。


バイクに乗るのは初めてで、なんだかドキドキしてしまう。


やっとのことで乗ったのに、八神はなかなか発進しようとしない。


どうしたんだろう?ときょとんとしていると。


「お前さぁ」


「ん?」


「つかまれよ」


「は?」


「つかまらないと、吹っ飛ぶんだって」


「ちゃんとシートにつかまってるわよ」


「おまっ、アホか!

ここだよ、ここ!」


八神はあたしの手を掴むと、自分の腰にあたしの手を持っていった。


その行動に、一気に顔が熱くなってしまう。


「じゃあ、行くぞ」


そう言うと八神はキーを回してエンジンをかけた。


その音が結構大きくて、ドキッと心臓が跳ね上がる。


そして、ついにバイクは走り始めた。


想像以上の加速に、あたしは思わずぎゅっと八神にしがみついてしまうのだった。
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