凪とスウェル
しばらくして千春さんの提案で、片岡とすずを誘ってドライブに出かけることになった。


俺と会うのはイヤかもしれないけど、もしすずと話せるなら、パンのお礼が言いたいと思っていた。


そのチャンスが訪れて、すずの横に座った途端、間近で見るすずに胸が高鳴るのを感じた。


俺はすずに、これからもパンを食べて欲しいと頼んだ。


俺のパンの味がイヤになったのなら仕方ないけど、そうじゃないならって…。


そしたらすずは、大好きだと言ってくれた。


好きと言ったのは、パンのことだってわかってたけど。


やけにドキドキして大変だった。


すずの姿を見ているだけで、こうして何気ない言葉を交わすだけで。


こんなにも身体中が反応してしまうなんて、思いもしなかった。


それを誤魔化すかのように、その後は淡々と話したけれど。


本当はかなり焦っていた。


ずっとフタをしていた感情が、蘇って来そうで。


俺はそれを払拭するように、必死に片岡を売り込んだ。


変なヤツにすずを取られてしまうくらいなら、片岡みたいな誠実なヤツにして欲しいって。


その時は、本気でそう思ったんだ。
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