凪とスウェル
「すず…」


「ん?」


「俺ね、よくすずの夢を見てたよ」


「え?どんな?」


「ほとんどがさ、島に居た頃の夢。

すずとの思い出は島に沢山あるから。

やっぱり夢も、高校の頃の夢ばっかり」


「そか…」


隆治が片手を自分の頭の下に置いて、あたしに身体を向ける。


あたしも同じように、隆治に向かい合うように身体を横に傾けた。


「一緒にフェリーに乗って、学校に行ったり。

教室で話したり。

キヨさんの家の縁側で話したり。

そんな夢」


「ふぅん…」


あたしは少し口角を上げた。


「ごく普通の、なんでもないやりとりなのに、なんか幸せで。

心があったかいんだ。

だけど、目が覚めたら…。

隣にすずはいないんだ…」


「隆治…」


「これが現実かって思ったら、勝手に涙が出てたよ…。

そんな夢ならまだマシで。

突然すずがいなくなる夢を見る時があるんだ。

必死にすずを探し回るんだけど、見つからなくて。

苦しくて、怖くて。

その夢を見た日の寝起きは最悪だった…」
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