凪とスウェル
あたしはふと、おばあちゃんの家で寝言を言った隆治を思い出していた。


あの時隆治は、苦しそうにあたしを何度も呼んで。


あたしを見つけた途端、良かったって言ったけど。


あたしがいなくなる夢を見ていたのかもしれないな…。


「すず…」


「ん?」


「もう少しこっちに…」


「え?でも、狭いでしょ?」


カーテンの隙間から、外の灯かりが漏れているから。


隆治の表情は意外によく見える。


隆治の顔はなぜかせつなそうで、それを見ていたらなんだか悲しくなった。


「狭いほどいい…。すずが離れないから…」


「隆治…」


さっきよりさらに隆治に近づくと、隆治は両腕を広げて、あたしをそっと包み込んだ。


「わ、あったかーい」


隆治の腕の中はすごく暖かくて、あたしは思わず、隆治の柔らかいシャツに頬擦りをした。


「お前、髪が冷たい。

こんなに冷たいと風邪ひくじゃん」


「だってこの部屋、すごく寒い。
真冬とか、大丈夫なの?」


「端の部屋で窓が二箇所あるからかな?
ごめんな…。
どうせ寝るだけだしって思って、深く考えてなかったんだ…」
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