凪とスウェル
「でも隆治…。

隆治がケガをさせたことと、千春ちゃんと結婚することは、違うんじゃないかな…。

だってもしあたしが千春ちゃんの立場なら、本気で愛して欲しいもの。

ケガを負わせた責任から一緒に居てくれたって、嬉しくも何ともないよ。

ご両親だってそうじゃない?

本当に娘を愛している人と、結婚して欲しいって思うんじゃないの?」


「すず…」


「隆治の気持ちを考えたら、そんな簡単なことじゃないってわかってるけど…。

でも、実際そうでしょう?

あたし達の両親、どっちも離婚してるからわかると思うけど。

好き同士でも、うまくいかないことがあるのよ?

それなのに、千春ちゃんと一生添い遂げること、出来る…?」


あたしの言葉に、隆治の目がユラユラしている。


きっと色んな思いが交錯しているのだろう。


「追い詰めるような言い方して、ごめんね。

とりあえず今日はもう遅いし、寝ようか。

引越しで疲れたでしょう?」


そう言って口角を上げると、隆治は静かに頷いた。


「すず…」


「ん?」


「帰る時は俺を絶対に起こして。

一人で、知らない間に帰ったりするなよ?」


「隆治…」
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