凪とスウェル
あたしを抱きしめる隆治の腕が、少し震えている。


怖いのかもしれない。


あたしがいなくなる夢を思い出して…。


「大丈夫。ちゃんと起こすから…」


そう言ってにっこり笑うと、隆治はほっと息を吐いた。


「じゃあ、寝ようか」


「あぁ…」


「隆治」


「ん?」


「ゆっくりでいいから、考えてみて…。

あたしは待てるから。

隆治の気持ちがわかったから、今はそれだけでも充分幸せだよ」


「すず…」


「大好きだから…」


「うん…。俺も…」


あたし達は、これでもかとぎゅっと互いを抱きしめた。


冷たかった布団も、いつの間にか暖かくなっていて。


あたしは隆治の腕に包まれながら。


いつの間にかぐっすりと眠っていた。
< 567 / 733 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop