凪とスウェル
駅まで歩いて電車に乗り込み、空いている席に横並びに座った。


何駅か駅を通過すると、ここだよと言って千春さんが電車を降りた。


あまり賑やかではない小さな駅のようで、降りる人の数も少なかった。


駅を出ると、千春さんは線路沿いの道をひたすら歩き始めた。


俺は初めて来る町が珍しくて、少しキョロキョロしながら、千春さんの後ろを歩いた。


しばらくすると、長いフェンスが真っ直ぐに続く通りに入った。


それを横目に見ながら、ひたすら歩いていると。


千春さんが急に足を止めた。


くるっと振り返る千春さん。


「ここは…?」


俺が問いかけると、千春さんがにっこり笑った。


「私が通っていた高校なの」


「えっ、そうなんですか?」


ここが、千春さんの出身校なんだ…。


知らなかったな…。


「正門が開いてるね。ちょっと入ってみようか」


「はい」


俺と千春さんは、日曜のひっそりとした高校へと足を踏み入れた。
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