凪とスウェル
三階建ての校舎を通り抜けると、カキーンカキーンと金属バッドの打球音が聞こえて来た。


日曜だけど、野球部が練習をしているのかな?と思った。


広いグランドに足を踏み入れると、野球部だけでなく、サッカー部なども練習をしているようだった。


その横をしばらく歩いていると、ひたすらグランドの周りを走っている生徒が数名、目に入って来た。


その子達とすれ違った後、グランドの隅に置かれたベンチに、千春さんはそっと腰を下ろした。


俺も少し距離を置いて、同じベンチに腰を下ろした。


千春さんは、目の前を走っていく学生達をじっと見つめている。


「懐かしいな」


ぼそっと呟く千春さん。


「あれは私の後輩達なのね…」


「後輩…?」


「あの黒いジャージ、私も着ていたの。

陸上部はみんな、あのジャージを着るのよ」


あぁ…。


あのひたすら走っている子達は、陸上部なんだ…。


しばらくその後輩達を見ていた千春さんが、静かに話し始めた。
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