凪とスウェル
「隆治はさ、もう充分償ったと思うんだよね。

その隆治の誠実さに甘えてるのは、向こうの家族だと思うんだ。

罪悪感に漬け込んで、隆治を縛り付ける権利なんてないと思うよ」


それは、あたしも確かにそう思う。


隆治は、必要以上に頑張ってると思う…。


「こうなってくるとさー、隆治の両親を恨んじゃうよ、私は」


「ホント。そうだよね…」


もしあの時、隆治のご両親がちゃんと隆治を支えてくれていたら、多分こんなことにはなっていなかったはず。


居場所を無くした隆治には、住み込みで働けるあのパン屋は、すごくメリットがあったはずだから…。


「アイツって、どうしてこうも不器用なのかしらねー。

すごくいいヤツなんだけど、それが裏目に出ちゃう。

必死になればなるほど空回りっていうか。

結果、色んな人を傷つけちゃってるし…」


隆治…。


「でも、きっとそういうのも全てひっくるめて、すずちゃんは隆治が好きなんだろうね」


「え、どうかな?」


「隆治を一番理解してるのは、やっぱりすずちゃんなんだと思うよー」


そう言われると、なんだか照れくさい。
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