凪とスウェル
「おいっ、なに逃げてんだよ」


「だ、だって、隆治が変なこと言うから」


ちょっと怒っていた隆治だったけど、すぐにふぅと長い息を吐いた。


「パン屋の仕事をしてる限り、休みが合わねーのはどうしようもねーなー。

あー、参った…」


ガクッと肩を落とす隆治。


なんか隆治って、見た目は大人っぽいのに、まるで子供みたい。


「ごめん…。
なんもしないから、こっち来て」


そう言って隆治が両腕を広げる。


「あ、でも今度はこっち向きに座って。

俺の足の上を跨いでさ」


「は?」


隆治がここに来いと、自分の太ももをトントンと叩く。


そ、それって…。


「いやー…、その体勢は、まずくない?」


すごく。


すごーく危険なような気がする。


「いいから早く来いって。来ないとマジで襲う」


「うっ」


本気で襲って来そうなので、あたしはしぶしぶ隆治に向かい合うようにして座った。


スカートだし、すごく恥ずかしい。


座った途端、隆治はあたしをぎゅっと抱きしめた。
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