恋に堕ちたら
朝から誰だろ?それも丁寧に「蒼井さん、おはようございます」なんて……。
その声のした方へ振り向く。
キョロキョロ辺りを見渡しても、そこに私の見知った顔は見当たらない。
もしかして、気のせいかな?
私、思ったより疲れてるかな?
声を掛けた人が見当たらないので、とぼとぼとまた歩き出す。
すると、誰かが私の側まで近付いてきて、ポンポンと肩を叩いた。
私は叩かれた肩を先の方向へ振り向くと、そこには佐藤さんが立っていた。
「おはようございます」
「お、おはよ」
再び挨拶してくれた佐藤さんは、私の顔を見て爽やかに微笑んだ。
佐藤さんって、ぱっと見は何処にでもいる人だけど、こうやって改めて近くで見ると結構可愛い顔をしている。
何となく厳ついイメージはあるけど……。
「早いですね。佐藤さん」
「そうですか?じゃあ蒼井さんも早いんですね?」
「………」
何とも微妙な会話に私は口をつぐむ。
妙な話題を振ってしまったな。
私は隣に佐藤さんが居るのも忘れてため息を吐いていた。