恋に堕ちたら
「あっ、今蒼井さんの幸せが逃げた!」
隣からそんな声が聞こえてきた。
「えっ?」
私と肩を並べ歩く佐藤さん。私はびっくりして彼の横顔を見上げた。
男性としてはあまり背の高くない佐藤さんだけど、私も対して背の高い方じゃあないから、だから自然と見上げてしまう。
それにしても、佐藤さんの口から『幸せが逃げる』だなんて。
あまりにも乙女チックな一言に私は自然と笑みを溢した。
「佐藤さん、もう私そう言う歳じゃあないし、今さら幸せの一つや二つ逃げたってどーってことないんだけど」
「………」
急に黙り込んでしまった隣の佐藤さん。
ふと彼を見上げれば、少しだけ不貞腐れた様な顔をしている。
私、彼の気のさわる様な事言ったかな?
そんな彼の横顔を見上げながら考えて歩いていると、何故か急に佐藤さんの手が私の肩を掴んだ。
「危ない!!」