恋に堕ちたら
トイレに向かう途中、上司に会う。
「佐藤くんと上手く遣ってるみたいだね」
「………」
廊下ですれ違い様、極上のスマイルを振り撒きつつ私の目の前で足を止める。
あーあ、なんでこんな時こいつに会ってしまうんだろう?
自分の不運さを呪いたくなる。
「あっ、それから蒼井、昼飯は俺が誘うから」
「えーと、はい?」
「だから佐藤くん。昼飯は俺が誘う」
「………」
突然何を言い出すと思いきや、そんな事。
私はまた知らず知らずにため息を落とす。
「あっ、もしかして自分が誘われたのかと思ったか?」
「お、思いません!!」
あー、なんて自意識過剰な奴なんだろ?
全くいつもこうやってこの人は私をからかう。
ニコニコといたずらっ子みたいなスマイルを張り付けて、いい大人な彼は、何を考えているのだろ?
「じゃあ、蒼井も一緒に行くか?」
「はい?」
「昼、お前もついでに誘ってやる」
「………」
おもいっきり上から目線の上司の台詞に私は絶句した。