恋に堕ちたら



「また夫婦喧嘩ですか?」



佐藤さんと上司の後ろ姿を見送っていると、さっきまで佐藤さんが座っていた席に飯塚ちゃんが腰を下ろした。



「あのねー、その『夫婦喧嘩』って言うのは止めてくれないかな」



毎回彼女はそう言うけど、けして夫婦喧嘩ではない。


それに、私と上司はそんな仲ではない。



私の台詞など聞こえていないのか、飯塚ちゃんは持参したお弁当箱の蓋を開ける。



そして「いただきます」なんて手を合わし、勝手にお昼を食べ始めた。



「ちょっと、飯塚ちゃん聞いてる?」


「聞いてますって。それよりお弁当食べないんですか?」


「た、食べるけど……」



なんだか話の腰を折られた感は否めないけど、確かに食べないと短い昼休みはあっという間に終わってしまう。



「後でゆっくり聞いてあげますんで、先輩早く食べちゃってください」


「………」



飯塚ちゃんって本当に私の事先輩なんて思ってるのかな?



私に対する態度を見ていると、何となく私より偉そうなんだけど。



まぁ、私と対等に話をするのは今じゃあ彼女しかいないから仕方ないけど。


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