ときめきに死す

 問.百合坂縁をひと言で表せ。

 私はその設問に、最適の答えを見付けられずに居る。

 百合坂縁。
 縁と書いてよすがと読む彼女は、非常に個性的で、奇天烈で、そして不思議極まりない人物だった。少なくとも、私の目にはそう映った。
 容貌からして非凡である。
 胸元まで伸びた色素の薄い髪。切り揃えられた前髪の下から覗く円らな瞳。それを縁取る長い睫毛。薔薇色の唇。
 少女人形と見紛うばかりの美貌。
 けれどその表情は、万華鏡のようにくるくると変わる。あどけない言動が、非現実的な彼女を現実の人間と認識させている。

 事実、年端も行かぬ少女なのだ。

 十五か、十六か。多く見積もっても十八歳。
 背丈も、手足も。まだ小さくて、未成熟な印象しかない。
 一回りも歳が離れていれば、たとえ同じ人間でも未知の生き物に等しい。私は縁という少女を、実は小指の爪ほども理解していないのかもしれない。

 からんからん。
 ドアベルが鳴った。扉が閉まると同時に、軽やかな跫が近付いて来る。
 十中八九、件の少女である。

「おなかが空いたの。おやつを頂戴、加賀美くん!」

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