ときめきに死す

 思わず息を呑んだ。

 どくどくと逸る鼓動。
 全身を巡る血液が沸騰しているのではないかと錯覚するほど、身体が熱を持っている。
 血流の音すら知覚してしまいそうだ。

 ひゅうと勢いよく酸素を取り込む。本当に呼吸を忘れるところだった。

「わたしって、加賀美くんの目にこんなに素敵に映ってたのね」

 不意に、縁が云った。

 その言葉が妙に照れ臭くて、擽ったい。
 羞恥心を散らすように髪を掻き乱し、観念して深く息を吐いた。

「そうだよ。君はいつも――きらきらと、輝いている」

 解き放った言葉に、少しだけ後悔した。
 青臭く、あまりに拙い。勿論本心なのだけれど、吐露してしまったことに対しての面映ゆさが勝っていた。
 居た堪れなくなって、私は自分の爪先に目を落とした。

「……嬉しい」

 ぽつり。
 鼓膜を揺らした縁の声に、反射的に顔を上げた。
 頬を桃色に染め上げた彼女の、柔らかく優しい微笑。

「わたしにも加賀美くん、きらきらして見えるから。お揃いね、わたしたち」

 彼女の言葉に、微笑みに、心臓が騒いだ。

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