らすとうぃっしゅ

私と同じくらい、その上同じ日の同じ時間に
この店に通っている青年がいるってこと。
しかも同じ高校の制服をきているのだ。
私のおバカな優越感なんて消え失せてしまった。

以前見かけて以来、その人物の存在を意識し始めてから、私の中の違和感は
日に日にひどくなっていくのだった。

それでも楽譜が欲しい私は今日もこの店を訪れ、お目当ての楽譜を見つけることができた。

「よいっしょ…と「あったあった」っちょ」

見つけることができたのはいいけれど、他にもお客がいたようだ
この場合、高い棚に手が届く長身が勝ちとることになる

「あ、ごめん、これ欲っかった?」

その長身がまさかあの青年とは
なんという面倒。

「べつに…」
「嘘、手え伸ばしてたでしょ…はい」
「え、」
「届いてなかったから、 あ、僕は別のが目当てだから」

そう言って彼は私に手に楽譜を乗せた。

「…どうも……」
「ねえ君さ、何か楽器やってるの?」
「いや、…どうしてそんなこときくの…」
「あ、いやあさ、ここで見る高校生って君くらいだったしさ、同じ高校みたいだったし…だから、どんな子なんだろうなあって」

私も彼のことは気になってはいたが、相手もそうっだたとは何だかくすぐったい。

「なにも」
「え?」
「なにも弾かないし、弾けない」
「じゃあ何で楽譜を?」
「好きなのよ、楽譜」
「ふ〜ん、変なの」
「関係ないじゃない」
「…冷たいなあ」

他人相手なのだからしょうがないと心の中で言う、というか、いつもこうなのだけど。

「ばいばい、楽譜…ありがと」

私は無表情のまま言うと、会計を済ませようとレジに向かった。

彼が何か言った気がするが、聞かなかった。

そういえば、この店で誰かと会話をしたのは初めてだったな。
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