らすとうぃっしゅ
貴崎 秋斗
あの日から3日がたった、あれからあの楽譜を読み込み、
あの曲にはアンサーソングが存在することを知った私は、早速その楽譜を求めて
楽器屋に向かった。
店に入って奥の棚の一番上の段。
「あった…………っう」
この高さは、ギリギリ届かない。
踏み台を持ってきて取るのは、なんとも恥ずかしいが、致し方ない。
私は踏み台のある向かいの棚の前にしゃがんだ。
すると、誰かに肩をたたかれた。
「はい」
振り向くと、この前の彼、貴崎秋斗が立っていた。
その手には届かなかったあの楽譜。
「また……あり、がと」
「どういたしまして」
私は立ち上がり楽譜を受け取る。
「これ、ピアノ伴奏だね、僕これひけるよ」
「え?ピアノ、弾けるの?」
「うん、僕の生きがい」
それは素晴らしい。音楽が好きな人は好きだ。
「ねえ、これからお茶でもどうかなあ……向かいのカフェ、知り合いの店でさ、ピアノあるからその曲弾かせてよ」
私も聞きたいと思った。
「うん、お願い」
私はこんなに人に気を許す人間だったでしょうか。